冷却手順(Yamagata Cryostat version)
2005.Jan. 岩田
<はじめにお断り>
これはあくまで大雑把な手引きです。実際はここには言及されていないバルブがたくさんあり、必要な作業が全て書いてある訳ではありません。クライオスタット運転にあたっては、全てのバルブの役割を理解し、開閉は真空計を見ながら慎重に行って下さい。
準備... 1
ターゲットの装着... 1
クライオスタット外側部分の予冷... 1
クライオスタットの挿入... 2
液体窒素によるクライオスタット全体の予冷... 2
液体ヘリウムトランスファーの準備... 2
3系ポンプの起動... 2
クライオスタット3系ラインの流量チェックと真空引き.. 3
液体ヘリウムによる冷却の開始... 3
3系にガスを流し始める.. 3
冷え始めたら…
ヘリウム3の回収
ヘリウムとランファーチューブを抜く
クライオスタットのアンロード.. 4
準備
準備については冷却準備リストを参照して下さい。
クライオスタットの構造を理解していない人は、以下の資料をごらんください。
構造概念図、クライオスタット前面パネル、ガス操作パネル、purifier概念図
リークチェックの方法
保守関係の資料
purifier、oil
filter(He3 line)
以下は低温関係の資料です。
ヘリウム4の相図、
以下はブタノール標的や照射標的など、低温を保たなければならない試料の場合について説明しています。ポリエチレン+TEMPOなどの場合は、温度にあまりシビアになる必要はありませんが、予冷に手を抜くと液体ヘリウムを無駄に消費することになります。
1.
発泡スチロール箱に液体窒素を溜め、クライオスタットの先端(熱交換器位まで)をここに沈めて十分冷やす。このとき、3系ラインに4Heが流れていることを確認(前日から流しておく)。
2.
NMRコイルの中にターゲットを入れる(液体窒素中で行う)。ターゲットが温まらないように、ターゲットに接触させるものは全て液体窒素で冷やすこと。以後常にターゲット部分は液体窒素温度に保ち温度をモニターする。
3.
銅製マイクロ波キャビティーを液体窒素で冷やしてから先端にかぶせる(温度計の線などをはさまないように!)。
4.
テフロンジャケットの先端部分を液体窒素で冷やし(全体を冷やすとテフロンが収縮して装着できなくなるので注意!)熱交換器部分を覆うようにピッチリとかぶせる(液体窒素から寸時出してすばやく装着)。すぐに液体窒素にジャケット全体を浸けて冷やすこと。とにかくターゲットの温度が上がらないように。
5.
3系バイパスのパイプが折れ曲がらないようにエナメル線などを用いてテフロンジャケットにくくりつける。
6.
液体窒素ラインをテフロンジャケットの先端に固定する。
7.
液体窒素で先端から熱交換器全体までをよく冷やしておく。この間にクライオスタットの外側部分の予冷を行っておく。
8.
ここで、コイルがしっかりつながっているか、NMR読み出し線をつなげてQカーブを確認しておく。
クライオスタット外筒部分の予冷
1.
断熱真空部があらかじめ真空引きされていることを確認(前日から)。液体窒素でのプレクーリングの時には、10^(-4) torr 程度の真空になっていること。このためには、リークディテクターの拡散ポンプを使用する。
2.
窒素デュワーのホースに延長パイプをゴム管で接続し、液体窒素を外筒内側に直接かける(まず一番奥をしっかり冷やしたのち延長パイプを抜きながら手前を冷やす)。このとき、液体窒素が実験室の床に落ちると、床がはがれてしまうので、ダンボール等で、保護すること。
クライオスタットの挿入
クライオスタット全体の温度上昇を防ぐため、この作業は急いで行いましょう。
1.
クライオスタットの外筒にインサート(本体)をすばやく挿入しボルトを均等にしめる。
2.
O-ringを忘れないように、温度計のリード線を挟み込まないように注意!
3.
3系に流すヘリウムガスのチューブを踏んでガス流を止めないように注意すること。
4.
separator, evaporatorの引き口をそれぞれのポンプに接続。
5.
排気用ポンプを用いてseparatorを真空引きしはじめる。
6.
evaporatorポンプは組みポンプになっており、まずロータリーを動かし、ゲートバルブをひらいてピラニー真空計で読めるくらいまで真空になったらブースターを動かす。
注) separatorおよびevaporatorは予め(前日)真空引きしておき、空気が入らないようにして予冷による霜付着を防止する。
液体窒素によるクライオスタットの予冷
1.
クライオスタットの窒素ガス抜き口が開いていることを確認。
2.
窒素デュワーのホースの先に窒素用トランスファーチューブをゴム管で接続し、クライオスタット前面パネルの液体窒素入り口から挿入し、予冷を開始。
3.
外筒O-ringの凍結を防ぐため、ヒーターで暖めながら、予冷を続ける。液体窒素が溜まらないように入れすぎに注意する。
4.
予冷中は、クライオスタットの前面や下部が凍りつかないように注意する。3系ニードルバルブのO-ringが凍ると3系のブロックによりフローが確保できなくなる。
5.
Still, MCの温度が液体窒素温度で安定したら、窒素供給を止め、トランスファーチューブを抜く。まだO-ringが凍ってくるようなら、引き続きヒーターを使用。
6.
液体窒素が蒸発するまで暫し待つ。(窒素ガス抜き口から出てくるガス流が感じられなくなるくらいまで)。
液体ヘリウムトランスファーの準備
1.
液体窒素が蒸発するのを待つ間に、ヘリウムデュワーに、トランスファーチューブを挿していく。作業中に内部の圧力が上がらないように、ガスの逃げ口のバルブを開いておく。トランスファーチューブを急に入れすぎると、ヘリウムが大量に蒸発するので、少しずつ入れていくこと(5〜10cm/10分)。
3系ポンプの起動
1.
オイルが十分であるか確認(前日準備)。
3.
一段目ブースターの上流のゲートバルブが閉じているか確認。
4.
排気ポンプを動かす。
5.
排気ポンプと3段目ロータリーとの間のバルブを開ける。
6.
ロータリーを動かす。
7.
ロータリーと2段目ブースターの間のバルブを開ける(ゲージに注意してゆっくり)。
8.
ロータリーで十分引いたら(ピラニーゲージで読めるくらい)、2段目ブースターを動かす。
9.
2段目ブースターで順調に引いていることをゲージで確認後、1段目ブースターを動かす。
10.
しばらく管の真空引きを続ける。
クライオスタット3系ラインの流量チェックと真空引き
1.
クライオスタット内の液体窒素が蒸発したら、もう一度断熱真空部が真空引きされているか確認の上、窒素ガス抜き口を閉めて、排気ポンプを用いてクライオスタット内を粗引きする。
2.
大体引けたら、3系ニードルバルブを閉めて3系ガス流入口につなげる管をゴムホースからSUSのflexibleチューブに変える(空気が入り込まないように注意)。
3.
3系ニードルバルブから上流のラインを真空引き。
4.
そのラインに4Heガスを詰めておき(大気圧)、ニードルバルブを開けて後何秒で4Heガス圧が0 → -10cmHgになるか計り(目安:25
sec)、ガスが流れることを確認する(ここで何度もテストして暖かいガスを流しすぎるとターゲットが温まるので注意)。
5.
クライオスタット内および、クライオスタットより上流の3系ガスライン(精製器の上流にある排気-循環切り替えバルブまで)をもう一度粗引き。
6.
クライオスタット内の圧力がピラニーゲージで読めるくらいまでになったら、クライオスタット下流のゲートバルブを少しずつ開けて(この時ブースターの真空計に注意!圧が上がりすぎないように)真空引きする(クライオスタット下流のゲートバルブを閉めてもクライオスタット内圧増加が認められなくなるまで真空引きを行う)。
7.
もし、流量チェックで流れが悪いようだったら、3系ニードルバルブを少しあけて4Heガスを流しておくとよいだろう。あまり景気よく流すとターゲットが温まる。
液体ヘリウムによる冷却の開始
1.
この時までに、液体ヘリウムデュワーへのトランスファーチューブの挿入が完了していなければならない。
2.
4系のニードルバルブを閉める。
3.
ガス操作パネルのバルーンに4Heガスを詰めた後、separatorとバルーンをつなげて同じ圧力になるようにする。
4.
デュワーのガス排出口のバルブを閉じて、デュワー内の圧が逃げないようにする。
5.
トランスファーチューブのキャップ、および、クライオスタット前面パネルの液体ヘリウム注入口フランジに付いているブラインドフランジを外し、トランスファーチューブのエアー抜きをした後クライオスタットに挿入する。この時バルーンを用いてseparatorを加圧し、外気が入らないようにすること。
6.
4系ニードルバルブを開ける。以後、separatorおよびevaporatorに液体ヘリウムが溜まるまで、evaporatorの圧力を監視しながらニードルバルブのコントロールを行う。evaporatorの圧力の目安は10torr程度である(ポンプの調子が良ければもう少し高め)。
3系にガスを流し始める
1.
精製器やオイルフィルターを液体窒素で冷やす。この冷やす所で使われるO-ringが凍らないようヒーターを巻く。巻きすぎると熱くなりすぎて焦げるので注意する。
2.
3系ポンプの3段目ロータリーの下流にあるバルブを排気モードから循環モードに切り替える。
3.
クライオスタットの3系ラインのニードルバルブを開けて、3He+4Heガスタンクからガスを流す。この際、急に大量のガスを流すと4系に負荷がかかるので、evaporatorの真空計を監視してもらいながら慎重に行う。
4.
4系が冷える前に3系に大量のガスを流すとターゲットが温まるので注意!
冷え始めたら…
1.
evaporatorのニードルバルブの開閉コントロール、separatorの排気口のバルブコントロールを行いながら、待つ事2〜3時間、evaporatorは十分液体ヘリウムが溜まると2K位まで一気に冷えはじめ、これによって、still,
MCも急速に冷却される。
2.
evaporatorに液体が溜まったら、クライオスタット4系ラインのニードルバルブを少しずつ閉めていく。また3系もstillに液体が溜まったら、ニードルバルブを少しずつ閉めて熱流入を減らし、系が安定する点を探す。
ヘリウム3の回収
1.
実験が終了したら、冷却を停止する作業に入る。
2.
精製器のすぐ下流のバルブを閉め、ヘリウム3の流入を止める。
3.
ヘリウム3ガス容器へのラインを開く。
4.
ヘリウム3ガス容器が満たされたら、ヘリウム4ガス容器へのラインを開く。
5.
ヘリウム4容器の圧力が上がらなくなったら、回収ポンプを利用して、3系ラインに残ったガスをすべて回収する。
6.
ヘリウム3がすべて回収されたら、3系を循環モードから排気モードに変更する。
7.
クライオスタット煙突部のゲートバルブを閉じる。
8.
ヘリウム3系ブースターポンプを停止し、ロータリー上流部のゲートバルブを閉じた後にロータリーも停止する。
ヘリウムトランスファーチューブを抜く
1.
ヘリウム4系ラインのニードルバルブを閉める。
2.
evaporator系ブースターポンプを停止。
3.
evaporatorはロータリーのみで引き続ける。
4.
ヘリウムデュワーのガス排出口のバルブを開き、デュワー内の圧力を下げる。
5.
separatorポンプへのバルブを閉め、セパレータ引き口にヘリウムのバルーンにつなぎ、セパレータをヘリウムで満たす(加圧状態)。
6.
トランスファーチューブを引き抜き、すぐにキャップをかぶせる。もたつくと、キャップが凍りつき、かぶせれなくなるので、あらかじめヒーターを用意しておくこと。
7.
セパレータの引き口にブランクフランジを取り付ける。
8.
ヘリウム消費を抑えるため、トランスファーチューブをデュワーから引き抜く。トランスファーチューブの逆側にもキャップをかぶせておく。
9.
ヘリウム4系ニードルバルブを開き、evaporatorにもヘリウムを満たす。
10. evaporatorへのラインを取り外し、evapoartorに空気が入って、結露しないように、ブランクフランジを取り付ける。ポンプ側のフレキシブルチューブにもキャップをつけておく。
Cryostat本体のアンロード
1.
ガス操作パネルのバルーンを3系につなぎヘリウムを満たす(加圧状態)。
2.
3系ニードルバルブを閉め、ヘリウム3インレットにブランクフランジを取り付ける。
3.
Cryostat本体を引き抜く。
4.
テフロンジャケットの上部(still側)をヒーターで暖めて、ジャケットを抜く。ターゲット物質やマイクロ波ウィンドウを暖めすぎないように注意する。
5.
ターゲットを取り外す。
6.
ターゲットを架台に取り付け、3系インレットからヘリウムガスを流しておく。3系ニードルは開けておく。
注意事項
1.
バルブの操作について
バルブを開けるときは、全開にしないで、すこし戻しておくようにする。全開で、つまみがかたくなっていると、閉まった状態だと誤解されることがある。
2.
冷えた空間を大気開放することがないように注意すること。結露の原因になります。圧力を大気圧にしたい場合は、ヘリウムガスを満たすこと。
3.
ヘリウム3系のブロックにより、3系のフローが確保できない場合には、ヘリウムトランストランスファーを中止して、暖かいガスを4系に送って、3系ラインを暖める。エアーリークによるブロッキングならば、解消する可能性がある。