2005.Jan.
岩田
リークチェックとは系に漏れが無いかを調べることです。ヘリウム4系のエバポレータには超流動状態のヘリウムが満たされますので、小さな穴でもあるとあっという間にヘリウムが漏れていきます。また、ヘリウム3系にリークがあると、貴重なヘリウム3ガスを逃がすことになったり、空気が入り込み熱交換器のキャピラリーを詰らせる原因にもなります。リークチックは入念にやりましょう。
(1) 系を排気し、系を封じ切る
(2) 真空度の時間変化を調べる
(3) リーク量を算出
(4) 金属からの気体放出速度と比較、それよりはるかに多い場合はリークあり
また、ガス放出の場合には、真空度変化の割合が時間的に変化
(5) リーク箇所を特定
1.
石鹸水によるバブル法
2.
ガイスラー放電による方法
3.
ヘリウムリークディテクターによる方法
排気後数分で大気圧にもどってしまう様な大きな漏れがある場合に、利用します。
1. 窒素ガスやヘリウムガスで系を加圧状態(+0.1atm)にします。
2. 筆に石鹸水をつけて、漏れていそうなところに塗ります。
3. 漏れがあれば、泡が膨らんできます。
系内に水分が入ると排気してもなかなかとれませんので、注意しましょう。
ガイスラー管に高電圧を掛け、ガス放電の色を観察します。真空度が40torr以上の場合は、放電が起こりません。空気の場合、圧力によっても違いますが、ピンク色のガス放電が観測されます。アルコールをリーク箇所に塗ると、アルコールのガス放電で、白っぽくなります。この色の変化からリーク箇所を特定します。ガイスラー管にはネオントランスを使って、AC100Vから昇圧した6kVがかかっています。注意しましょう。長時間にわたって放電を続けると電極が溶けることがありますので、必要最小限にします。
左から空気 40 torr、20 torr、1 torr、0.7 torrの場合
(クリックすると拡大表示されます)
左からアルコール 2 torr、 0.7 torr、0.6 torrの場合
(クリックすると拡大表示されます)
非常に小さな漏れの場合の方法です。ヘリウムリークディテクターには、マススペクトロメータが内蔵されており、微量のへリウムを検出することができます。リークディテクター内のディフュージョンポンプで2x10^(-4)以下まで排気できる場合に使えます。小さな風船に詰めたヘリウムガスを怪しいところに少量吹きかけ、リークディテクターの反応を見て、漏れを探します。あまり、大量のヘリウムを出したり、ディテクターの周辺がヘリウムの雰囲気になると、リークディテクターのポンプの排気口からヘリウムが逆流し、検出感度が低下します。
また、常時ヘリウムを流している系では、金属内部からヘリウムが出てきてバックグラウンドになり、検出できないことがあります。
ULVAC 質量分析型ヘリウムリークディテクター
DLMS-33
単位時間にもれるガス流量、単位[Pa m^(3)/s]
1[Pa m^(3)/s]は2.65165x10^(20)molecule/sに相当
または、1[Pa m^(3)/s]は0.44 m mol/s
ステンレスSUS304L, アルミ合金 の1時間排気後
1x10^(-6) ~ 4.5x10^(-8) [Pa m^(3) s^(-1) m^(-2)](材質と表面処理により変化)
新版 真空ハンドブック(アルバック社編)より
系の内面積を1m^(2)程度とすると、1[Pa m^(3)/s]は0.44 m mol/sより
気体放出速度は10^(-9) mol/s以下、容積1m^(3)程度の系を考えれば、
真空度が10^(-6)Pa/sつまり10^(-4)torr/sで悪化することに相当する。