狭空間中の放出気体による内圧上昇

 真空中におかれた物質の表面からは決まった割合で気体が発生する。つまり真空を維持したときは 容器の内側(真空部分)から気体が発生することになり内圧の上昇を引き起こす。この気体発生の割合は物質によって、また真空にしてからの時間によって決まった値であり「圧力上昇速度」という。 単位面積、単位時間当たりのを表し単位は[Pa・m{3}/s・m{2}]である。

 圧力上昇速度は単位面積あたりの値なので、狭い空間であればあるほど容積V[m{3}]に対する内面積S[m{2}]の割合が多くなり 圧力上昇の割合は大きくなる。狭い空間(数十cc)の内圧をモニターするときはリークと間違えやすいので注意が必要である。

 閉空間の圧力上昇が気体放出によるものか、それともリークかは、長時間(20hくらい)圧力をモニターし、その 上昇曲線をみると判断できる。圧力上昇速度は真空にしてからの経過時間によって大きく異なる。たとえばステンレス鋼の場合 真空状態にしてから1時間経過するまでの圧力上昇速度は 2.9E-5[Pa・m{3}/s・m{2}] なのに対して、20時間経過後の圧力上昇速度は  1.3E-6[Pa・m{3}/s・m{2}] である。このため気体放出による圧力上昇は、時間が経つにつれて傾きが緩くなるようなグラフを描く。 リークによる圧力上昇はリニアなグラフになるはずである。
 以下に気体放出による閉空間の圧力上昇のグラフをのせる。いずれも同じ空間(5~10cc)に異なる真空ゲージをつけて測定したものである。


図1)ピラニーによるモニター。圧力の違いは読み取り誤差。


図2)RPTによるモニター。