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加藤静吾(教授) | [Home] | |
岩田高広(助教授) | [Home] | |
吉田浩司(講師) | [Home] | |
田島靖久(助手・総合情報処理センター) | [Home] |
私たちは、原子核物理学や素粒子物理学と呼ばれる分野を中心に、 幅広く実験的な研究を行っています。
私たちの身の回りの世界は、電子、陽子、中性子などの物質でできています。 ところが高エネルギーの実験では正電荷をもった電子(陽電子)、 反陽子、反中性子などいわゆる反物質を作り出すことが可能です。 本来、物質と反物質は全く対等なはずですが、 日常的にお目にかかることができるのは物質だけです。 物理学者たちは、ビッグバンにより宇宙が誕生して以来、 何らかのメカニズムが働いて、反物質が消滅して物質だけが残ったと考えています。 この反物質消滅のシナリオの鍵を握っていると見られているのが、 「弱い力」と呼ばれる粒子間の相互作用です。 私たちのグループは、K中間子という粒子の崩壊実験を通して、 この「弱い力」の謎に挑もうとしています。 現在高エネルギー研究機構 KEK E391aとして実験準備中です。
An endcap part of the vacuum vessel |
KEK E391a の検出器システムは長さ8m以上直径3m程度の大きなものですが、 それらはすべて巨大な真空容器の中に収められて実験が行われます。 この写真は、真空容器の最下流部のふたを撮ったものです。 |
KEKで実験中の大学院生
Plastic Scintilaltor and WLS fibers |
紫外線を照射しながら、プラスティック粒子検出器に、 波長変換タイプの光ファイバーを接着しているところ。 |
宇宙に存在する元素はどのように作られてきたのでしょうか。 ビッグバンや星の内外で起こっている核反応を加速器実験によって再現して、 現在宇宙に存在する元素はどのような過程を経て合成され、 なぜ現在あるような比率で存在するのかを検証する実験を行っています。 このような研究は天然には存在しない不安定核を核反応で合成し、 それをさらにビームとして次の核反応を起こすことによって実現されます。
13C(α,n)16O原子核反応の宇宙物理的 S factor |
曲線AとBは、17O原子核のsub-threshold stateによる強い増大があると仮定して導かれた、過去のS factorです。 現在の結果(曲線C)はそのようなsub-threshold stateからのS factorに対する寄与が大変小さいことを示しています。 |
米国ジェファーソン研究所に設置予定のK中間子スペクトロメータ |
HKSと 表示した160トン程の巨大電磁石の製作に参加しています。 主として電磁石の光学的特性と電磁石の磁気的特性の検討と設計を分担しています。 |
電子スペクトロメータ |
理化学研究所で計画している不安定核ビームと電子ビームとのビーム衝突実験 に提案中の電子スペクトロメータ。実現すれば衝突ビーム実験で初めて高分解能測定が可能になります。 |
電子や、陽子、中性子など物質を構成する粒子はコマのように自転しています。
これをスピンと言いますが、
何がこのスピンを担っているのか?これは物質の微細構造を考える上での重要な問題です。
陽子、中性子などの核子はスピン角運動量1/2を持っています。
また、核子は、クォークから成り立っており、
このクォークはグルーオン(糊粒子)と呼ばれる粒子の交換によって、
核子の中に閉じこめられています。
ところで、クォークのスピン角運動量は1/2、
グルーオンのスピン角運動量は1です。
これらの合成で核子のスピンが構成されているはずですが、
いったいどのような割合で角運動量を担っているのでしょうか?
最近になってようやくこの疑問について実験的に取り組めるようになってきました。
その結果、核子スピンに対するクォークスピンの寄与は、高々20%程度に過ぎないということがわかってきました。
それでは残りの80%は何が担っているのでしょうか?
この問題は「スピンの危機」と呼ばれ、世界中の物理学者の頭を悩ませてきています。
この謎を解明するために、CERN(欧州原子核研究所)でCOMPASSという国際共同実験プロジェクトが立ち上がりました。
この実験のためには、陽子や中性子のスピンをそろえる技術が必要不可欠ですが、
私たちのグループは、この技術において中心的な役割を果たしています。
偏極ターゲット |
高周波、極低温、電磁石、真空などの高い技術力が要求される |
COMPASS実験装置の概念図 |
手前が偏極ターゲット。その後方には素粒子反応後の高エネルギー粒子を検出するための測定器が並んでいる。 |
ビッグバン直後、誕生したばかりの宇宙は想像を絶する高温・高密度状態であったと考えられています。 そのときの「物質と力」のありようは、 いまの宇宙と全く異なるものであったに違いありません。 ビッグバン程ではありませんが、 原子核の内部というのはとても密度が高いところです。 私たちは、高エネルギーの加速器を用いて、 原子核内に高温・高密度の状態を人工的に作り出し、 ビッグバン直後の宇宙の様子や物理法則の形を探る実験を行おうと計画中です。
固体水素ターゲットとガンマ線検出器 |
東北大学原子核理学研究施設(LNS)における(γ, η)原子核反応実験の検出器の様子です。 固体水素ターゲットを中心にして高エネルギーγ線検出器がならんでいます。 |
これらの研究を推進するのに加速器の使用は不可欠なので、高エネルギー加速器研究機構、CERN、理化学研究所、SPring-8などの国内外の研究機関と協力しながら実験に取り組んでいます。 山形でもこれらの実験の準備のために、実験で使用する偏極標的の開発、 検出器のデザインを決めるためのシミュレーションや新しい検出器の開発とテスト、データの解析などを行っています。