目次

KiCad

Ver.4 の解説になります。Ver.5対応は適宜おこないます。たぶん。 Ver.6対応に書き直しました。Ver.7もそれほど変わらないかと思います。

2023/07/10 ORIMIN PCBが使えなくなった替わりにFlatCAMを使って切削パターンを作れるようになりました。 説明についてはこれから書きます。

2022/11/11 気づいたら Ver.6になっていました。なのでVer.6対応に書き換えていきます。

2019/12/10現在 Ver. 5.1以降ではPcbnewのベタグランドの塗り方が選べなくなっています。Mac, Windowsで確認されました。OriminPcbを使用する際はエラーになるので注意。 (公式の最新マニュアルではLinux版の画像を使用していて、5.02以前と同様なメニューが出ているのでLinuxでは可能かもしれません。) フォーラムへの投稿

概要

KiCadはオープンソース(GPL v3)の回路図作成、プリント基板の設計をおこなう 電子回路設計ソフトウェアです。NCマシンによるプリント基板の作成にも業者へ 発注するプリント基板の設計にも使うことができます。日本語化もされており、 日本語のドキュメントも充実しているのが特徴です。 オープンソースですが、現在はCERNのサポートもあり、商用品に近い機能となっています。

KiCadは複数の独立したプログラムで構成されており、それぞれの間のデータのやりとりは ファイルによって行われます。

プログラム名 機能 使用するファイルの拡張子
KiCad プロジェクトマネージャ .pro
Eeschema 回路図エディタ .sch .lib .net
シンボルエディター
CvPcb フットプリントセレクタエディター .net
Pcbnew PCBレイアウトエディター .kicad_pcb
GerbView ガーバービューア .gbr
Bitmap2Component ビットマップ変換イメージコンバーター .lib .kicad_pcb .kicad_wks
PCB Calculator コンポーネント用計算機ツール
Pl EditorPage Layout Editor 図枠エディタ図面シートエディター .kicad_wks

参考リンク

終わってしまっていそうなサイト

* KiCad ことはじめ (Ver.4.0.6導入説明書 ) * 日本語マニュアル

用語

プリント基板作成にはいくつか用語がでてきますので、ここにまとめておきます。

インストール

Windows, Mac OS, Linux用のパッケージがあるので、使用環境に合わせてダウンロードして、インストールします。

作成手順

実際に操作をしてみてわかったこと等をいくつか書き加えてありますが KiCad ことはじめ KiCad ことはじめを参考にして作成した説明ですので、こちらも見ながら読んで下さい。

概要

準備

KiCadを起動すると初めに作業ディレクトリを聞かれます。KiCadでは複数のファイルにデータが保存されますので、 KiCad用のディレクトリを事前に用意しておくとよいでしょう。 さらに、その下に個々のプロジェクト(製作)ごとにディレクトリを分けるとファイルの一覧が見やすくなります。

起動

KiCadを起動して新規プロジェクトを作成すると以下のような画面になります。 (設定で言語設定を日本語にします。)

KiCad本体はプロジェクトマネージャなので、ここから各プログラムを起動します。

部の大きなアイコンが起動できるプログラムで、上からEeschema, ライブラリシンボルエディタ, Pcbnew, フットプリントエディタ, GarbView, Bitmap2Component, pcb_Calculator, pl_editorになります。

回路図作成

回路図エディター(Eeschema)を起動します。

準備

(上メニュー) 用紙設定ができます。

タイトル・更新日・コメント等を記入します。

画面表示

マウスのスクロールでマウスのある位置を中心にして画面の拡大・縮小が行われます。

F4もしくはマウス右クリックのメニューで「中心」を選ぶとマウスの位置が中心に移動します。

部品の配置

(右メニュー) 選択後に図面上でクリックするとシンボルの選択ウィンドウが開きます。

シンボルを選ぶと、回路図記号が表示されますので、自分が使用したい形状のものを選びます。

シンボルの移動・向きの変更・数値の入力等はシンボル上にマウスを持っていって、

マウスの右クリックのメニューでも設定可能。 マウスの場所によっては文字のみ操作してしまう場合もあるので、素子の図形もしくは端子の線部分にマウスを持っていくのがよい。

電源系

(右メニュー) 電源系は上記のシンボルのカテゴリの中から“power”を選べばよいが、このアイコンでも同様に選択できる。(GNDだけではない)

電源が供給されていることを示すため、図面上にシンボルライブラリよりpowoerの中のPWR_FLAGを貼り付け、電源ラインにそれぞれ接続しておく必要がある。

配線

(右メニュー)選択後、配線することができます。 配線は始点と経由点はクリックで設定できます。コンポーネントの端子・他の配線にたどり着いたときは自動的に終了。 なにもないところで終了したいときはダブルクリックで終了。

削除はBackspaceでできるが、配線全部でなく、一部の直線部分しか削除されず、後述のジャンクションも残るので注意。

(右メニュー) T字の配線は自動的に結合(ジャンクション)を作成しますが、 クロスした線は結合しません。結合させたい場合はこちらを選択後に結合点をクリックします。

(右メニュー) ICやコネクタで未結線をそのままにしておくとチェック時にエラーになるので、 未接続端をこれで指定する。

アノテーション

(上メニュー) 配線が完了したら、各コンポーネントに番号(R1, R2,…, C1, C2, …)を割り当て(アノテーション)をします。

結線チェック

(上メニュー) 配線忘れがないかエレクトリカルルールチェックを実行する。エラー・警告がなくなるよう修正して完了する。

完成例

フットプリントの指定

(上メニュー) シンボルとフットプリントの対応を設定するため、フットプリントの割り当てを起動しますと以下のようなウィンドウが開きます。 中央のカラムが回路図で使用しているシンボルとそこに割り当てられたフットプリントの表(未設定のものは右が空欄)で、 左のカラムは使用できるフットプリントのライブラリのカテゴリ、右のカラムが選択できるフットプリントになります。

(フットプリントの割り当て 上メニュー) 右カラムで選択されたフットプリントを表示することができます。フットプリントの形状を見ながら選択することができます。

(フットプリントの表示画面 メニュー) 3D表示で見ることもできます。

フットプリントの選び方で注意する点は、

(上メニュー) フットプリントの設定が完了したら、こちらをクリックしてシンボルのリスト・接続リスト・フットプリントの情報が入った部品表を出力します。

(上メニュー)部品表を保存する。

この作業は回路変更・フットプリントの変更した際には必ず実行すること。 ネットリストを作成(更新)しないと、次のプリント基板の配線の設定に反映できないので注意。

(上メニュー) 回路図エディターを終了するときは、アイコンをクリックして必ずファイルを保存するようにしましょう。

プリント基板レイアウト

KiCadに戻ってPCBエディターを起動し、ネットリストのファイルからプリント基板のレイアウトを作成します。

準備

(上メニュー) 用紙設定ができます。 (回路図エディターと同様)

タイトル・更新日・コメント等を記入します。

画面表示

マウスのスクロールでマウスのある位置を中心にして画面の拡大・縮小が行われます。(回路図エディターと同様)

基板の設定

基板の設定を行います。

配線幅、クリアランスの設定

PCBメーカーに発注する場合、一般的にクリアランスと最小配線幅が0.25mm らしいので、その設定をします。

NCマシンで削る場合、配線幅が0.25mmでは狭すぎるので、1.25mm, 2.50mm程度まで太くしたほうが良さそう。
* 「制約」の最小配線幅に使用する予定の配線幅(1.25mm, 2.50mm)を登録
* 「ネットクラス」のネットクラスのdefaultの配線幅の値をメインで使う線幅(例1.25mm)に変更

レイヤー設定

プリント基板の構成を決めておきます。回路的にノイズ対策等が重要ということでもなければ、多層化すると高くなりますので、 通常は両面の2層でよいでしょう。

レイヤーは多数ありますが命名規則があり、“F”は表面、“B”は裏面で、以下のように決まっています。

レイヤー名 機能
F.Cu, B.Cu Cuは導電層(銅)層で、配線はこの層に記述します。
In[12].Cu 多層基板の場合、内側の層がIn1, In2となります。
[FB].Silkscreen シルクスクリーン(基板上に印刷される文字等)を記述します。
[FB].Mask 基板表面を絶縁するためのレジストを塗らないエリア(はんだ付けをする部分)の指定をします。(通常自動的に生成)
[FB].Paste はんだペーストを塗るためのマスクを指定をします。(通常自動的に生成)
[FB].Adhesive 表面実装部品を固定する接着剤のレイヤー
[FB].Countyard 部品の外形を示す長方形(Countyard)を描くレイヤー
[FB].Fab 製作者の書き込み用のレイヤー
Edge.Cuts 基板の外形線のレイヤーで基板の大きさ、ネジ穴等を記述します。
User.Drawings 基板寸法などを記載するレイヤー
User.* コメント等自由に書いて良いレイヤー

回路図の読み込み

回路図エディターで作成した部品表を読み込みます。

読み込んだシンボルはすべて重なっているので、 回路図エディターのときと同様に'g'で移動、 'r','x','y'で回転させてプリント基板上の配置に並べます。

基板上に部品を配置するときに注意すべき点は

配線 (B.Cu, F.Cu)

コンポーネント間の配線はこの配線アイコンを選択(アイコンの背景が水色になる)して、 つなげたい配線の頂点をクリックして伸ばしていく。終点はダブルクリックで終了。

片面配線の場合は基本的に部品面でない面(裏面)に配線をおこないます。(そのほうが完成後に配線の確認が容易であるため。) そこで、配線をするレイヤー、裏面の導電面の“B.Cu”を選択しておいてから配線をおこないます。

つながないといけない部分は細い白い線で描かれています。GNDの接続以外を接続します。

配線がどうしても交差してしまうときは、

基板サイズの決定 (Edge.Cuts)

配線が完了したら、配線部分が入るように基板の大きさを決定します。 基板形状はEdge.Cutsのレイヤーに記載するので、レイヤーを切り替えます。 直線は各頂点をクリックで、終点をダブルクリックで指定します。 最後の頂点でちゃんと閉じるよう、画面を拡大して確認してください。 円形の穴も中心と半径をクリックすると設定されます。

寸法などを正確にしたい場合は、線上で右クリックをして「図形の編集」で数値を入力できるウィンドウが開きますので、そちらで入力してください。

基板固定穴の作成

フットプリントの追加で、 “MountingHole” の中から適当なものを選びます。 (特に指定がない場合は “MountingHole_2.2mm_M2_ISO7380_Pad” あたりを選択するとよい。)

基板固定用の穴は配線長が0のビアで作ります。 穴の大きさをメニューの「デザインルール」-「デザインルール」の「グローバルデザインルール」タブのカスタムビアサイズの 直径に固定穴の大きさを、ドリルに直径に入れた値より少し小さい値を入れて登録します。 あとは配線の要領で、ビアを登録した大きさに変更(上部の選択メニューから)して固定穴中心から配線の開始をし、マウスを動かすことなく、ビア作成('v')、配線の終了(ダブルクリック)で固定穴を作ることができます。

グランドプレーンの作成 (F.Cu, B.Cu)

残ったGNDをつなぐために塗りつぶしゾーンを設定します。塗りつぶしアイコンを選択した状態から、塗りつぶす範囲(基板全体)の頂点をクリックで指定(基板サイズの決定でおこなった直線図形の書き方と同様)します。

開始時に塗りつぶすレイヤー(B.Cu等)と塗りつぶしに入れる配線(GND, +5V等)の指定が出ますので、レイヤーと配線種類を決定します。

NC フライスで基板を制作する場合、defaultのままの掘削用のデータに変換するプログラム(ORIMIN PCB)設定だとべたの部分でエラーになります。
導体ゾーンのプロパティの「塗りつぶしモード」を「セグメント」に設定してガーバーデータを作成することでこのエラーを回避できます。

範囲の指定後に、範囲内で右クリックをして「ゾーン」-「ゾーンの塗りつぶし」でGND配線が完了します。

再度、配線を編集したいときは「ゾーンの塗りつぶしエリアの削除」で削除します。

基板寸法等の書込 (User.Drawings)

基板の寸法はDwgs.Userに書き込みます。(他の*.Userでも可) 寸法線アイコンをクリックして、寸法の始点、終点、矢印・数値の表示位置の順に画面をクリックして決定します。

配線確認

デザインルールチェック(DRC)ツールを起動して実行し、配線の抜け、重なり、間隔の確認をします。 これでエラーが出なければ設計完了です。

以下は完成した画面です。

基板原点の設定

基板をガーバーファイル・ドリルファイルに出力するときの原点を設定します。

赤い⊕が出てくるので、基板の左下に設定するのが一般的です。

ガーバーファイルの出力

プリント基板を発注、もしくは製作する場合には設計した図面をガーバーデータとして出力する必要があります。

メニューの「ファイル」-「プロット」から、出力フォーマットを「ガーバー」にして、使用するレイヤー(B.Cu, Edge.Cuts, B.Silks等)を選択して、出力します。 また、部品取付用の穴の記述のあるドリルファイルも作成します。(こちらのファイルもガーバー形式で出力)

NC フライスで製作する場合、ドリルファイルの設定は

で作成すること。

基板製作

ガーバーファイルを使って、基板の業者発注をおこないます。詳しくは各メーカーのサイトを見てください。

NCマシンの掘削で作成する場合は、ガーバーファイルとドリルファイルを用意したら、 FlatCAMを使った 基板作成にうつります。

(以前はORIMIN PCBを使った 基板作成を使っていましたが、 KiCADのversion upによって使えなくなりました。)