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光速は秒速30万キロメートルという大きな値で知られています。日常生活で登場する速度と比べると光速は事実上無限大のように感じます。しかし光速は非常に大きな値ですが無限大ではありません。このことを厳密に取り扱うと相対論が必要になります。相対論的力学は古典物理学を拡張したものであり,運動する物体の速度が光速と比べて無視できるほど小さい極限で古典力学になります。この章では最初に光速が無限大ではないことをどのようにして気づいたのか、有限にするとどうなるかを考えます。
光速の有限性
最初に光速を測る実験をしたのはガリレオであるとされています。彼はこの実験を弟子にさせました。1マイル離れた丘の上でランタンの光を交換して往復距離を往復時間で割れば光速が得られるはずである,というものでした。現在知っている光速の値を使うと往復時間は11マイクロ秒にしかならないので,光を見て動作をするという人間の作業時間の方がはるかに長い時間を要することを考えると,この実験が失敗して当然であることになります。
実験は失敗でしたが,安易に無限大であるとするのではなく,実験的に確認しようとする態度は注目に値します。このような実験を成功させるためには往復距離を天文学的な長い距離にするか,短い時間でも精度よく測定するかのどちらかが要求されます。現在の電子技術では,光でもたった30センチしか進まない1ナノ秒以下の電子回路処理も可能です。このような技術を使わないとすれば,残る方法は,地球を飛び出して,天文学的に長い距離を利用することになります。次に述べるレーマーの発見は結果的に地球の公転直径を利用するものです。
ここをクリックしてみましょう。ハブル望遠鏡で得られた、木星の周りを回る衛星とその影の動画です。光が右の方から来るので、影は衛星本体より左側に見えることに注意してください。衛星本体が2つ、影は3つ見えます。

この写真はアマチュアの天文愛好家が木星のガリレオ衛星の動きを30分間隔で撮影したものです。衛星の動きが速いことに注目してください。第1衛星イオは42.5時間で木星を一周します。木星半径の6倍以下の所を回っていますので毎回食が起こることも感じてください。
レーマーは木星の第1衛星イオが木星の裏側に入ったり出たりする時刻を観測する業務につきました。当時の航海技術,通信技術,時計の精度を考慮すると,この食の始まり,終わりの時刻を知ることは地球上の経度(パリとの経度の差)を知る上で必要なことでした。レーマー以前からイオの公転周期(平均で42.5時間)が平均から規則的にずれることに気づいていました。それは衝(太陽・地球・木星が一直線に並ぶ時)から合(地球・太陽・木星と並ぶ時)までは公転周期が平均より長く,合から衝までは平均より短く,その平均からのずれの最大値は約15秒,ずれをその期間で積算すると約20分になる,というものでした。その理由は理解できなくても,将来の食に関する時刻を正確に予言できるので,経度を求めるという目的には支障はありませんでした。
1676年,レーマーはこの原因を説明するとともに光速を導き出すことができました。レーマーは約20分という時間は地球の公転直径を光が通過するのに要する時間だと見抜きました。当時知られていた太陽までの距離は現在知っているものの3分の2であったために得られた光速も現在知られているものの3分の2となりました。現在の値からずれていますが初めて光速が有限であることを知った重要な発見です。
光のドップラー効果
光とは電磁波の一種で電場と磁場との振動が空間を伝わっていくものです。難しい話を避けるために光には振動数(周波数とも言います)と波長を定義できる、とだけ考えてください。青い光は赤い光よりも波長が短く、振動数が大きくなります。波長と振動数を掛けると光速になります(光速は赤も青も同じ)。
さてレーマーの観測は「イオの公転周期」がイオから遠ざかりながら光で観測すると伸びる(近づきながらなら縮む)ということでした。約15秒という最大のずれは、1公転の間に地球が動く距離(地球公転速度 X 42.5時間)を光が伝わるのに要する時間であるとして、光速を計算することもできます。それならば同様に周期的現象である光の伝播もその周期が遠ざかりつつ観測されれば伸びる(近づきながらならば縮む)ことは納得できると思います。従って赤信号に高速(光速に近いかなり高速)で近づけば青信号に見えることになります。但し信号無視よりもスピード違反が重大です。光のドップラー効果が光速が無限大でないために起こる現象であることと音のドップラー効果が音速が無限大でないために起こることとで理由は共通であることに注意してください。元素が出す光は連続的ではなく飛び飛びの、元素特有の波長になりますが、天体からの光がその波長からずれていれば天体の視線方向の速度を求めることができます。宇宙膨張のハブルの法則の「後退速度」は波長の伸び(赤方偏移)から得られたことを思い出してください。
特殊相対論
秒速30万kmという光速は何を基準にしての速さでしょうか。無限の速さならば基準を考えることはできません(無限大に何かを加えても無限大で、その間で大小の比較はできない)が、有限の速さの場合は基準によって光速が変りそうに思えます。この基準の問題は光速が有限であるために初めて起こるものであることに注意してください。地球が基準なのでしょうか、それとも地球の周りの「空間」(または太陽)が基準なのでしょうか。太陽の周りを公転している地球の公転速度は光速の約1万分の1もあります。地球に到来する光は地球の公転の正面から来る場合と後ろから追いかけて来る場合とで、地球公転速度による影響を受けて地球で測る光速が変わるのでしょうか。変わるとすれば1万分の1の効果ではなく1次の効果が相殺して2次の効果である約1億分の1の効果になりますが、それでも精密な装置では観測できます。19世紀末にマイケルソン・モーレーによって実験が行われました(マイケルソン・モーレーの実験)。
結果は光速は方向によって変わらないということでした。しかし、これを受けて地球を宇宙の絶対的な基準とする訳にはいきません。そうすれば天動説の復活を意味します。
お互いに動いている基準のどちらにとっても、有限である光速が同じである、という実験事実を受け入れると、速さの加減算のこれまでの常識(さらに時間・空間のこれまでの常識)の根底が崩されてしまいます。実験結果と両立する新しい時間・空間の概念を与えたのがアインシュタインの特殊相対論です。
アインシュタインは次の2点を原理(前提)としました。
この2つの前提を認めると以下に述べる結論が簡単に得られます。
1つの慣性座標系で同時に起こった2つの出来事は異なった場所であれば,相対運動をしている(相対速度が0でない)他の慣性座標系から見ると同時ではありません。
相対的に動いている別の慣性座標系の基準では,長さが進行方向に縮みます。
相対的に動いている別の慣性座標系では,時間の進みが遅くなります。 どちらの慣性座標系も平等でなければならないので,どちらから見ても他方の時間の進みが遅れるのです。
同じ場所にいるのは一度だけなので,このことに矛盾があるかどうかをじっくり照合することはできません。他方の時間のすすみの情報を光で伝達して照合する場合、光の速さは有限なので,上記のドップラー効果による影響を考慮しなければなりません。時間経過が同じでもドップラー効果では、近づく場合には相手の時間経過が速く、遠ざかる場合に遅く観測されます。相対論の時間の遅れは遠ざかるか近づくかによらず、相手の時間経過が遅くなるので混同しないようにしましょう。
上記の「時間の遅れ」で照合できないとしましたが、一方が戻ってくればじっくり照合できます。その場合でも同じ場所で他方の時間経過が少ないということが正しいのでしょうか。そのために次の場合を考えましょう。
双子の一方が高速度で宇宙旅行して帰ってきて年齢(時間の経過)を照合するとする。「時間の遅れ」で説明したことによれば,留守番から見れば旅行者の時間経過が少ないので「旅行者が若い」と言うはずです。
ところが旅行者から見れば,慣性座標系が平等であるならば留守番こそ地球と一緒に逆向きに往復運動をしてきたことになるので,「留守番が若い」と主張することになります。この経過時間の照合は同じ場所で行うので,情報伝達時間を考慮する必要はありません。この矛盾した主張が両立できない事は明らかです。この矛盾を「双子のパラドックス」と言います。このパラドックスを乗り越えないと特殊相対論全体の真偽にかかわります。
「双子のパラドックス」として単に「時間の遅れ」を説明しているホームページが多数あります。「双子のパラドックス」は「時間の遅れ」の盲点(?)を突く問題提起に過ぎません。両者の違いに十分注意してください。「盲点」でないことは授業で説明します。
(予習課題3-1) この問題(パラドックス)の解決法を授業で説明する前に提出することを課題とします。パラドックスの解決ではなく単に時間の遅れを説明しているホームページが多数ありますので注意してください。(提出期限は授業で説明する前日です。メールを発信するにはここをクリックします。)
締切りました。(遠藤可奈子)
弟が地球にいる間、兄が高速で旅行に行って帰ってくるとすると、兄は地球に帰ってくるために途中で向きを変えないといけない。このため、地球に固定した座標系、行きの座標系、帰りの座標系の3つを考えなければならない。
弟から見ると、動いている兄の方が常に時間の進みが遅いため弟の方が歳をとる。
また兄から見ると、動いている弟の方が最初は時間の進みが遅いけれど、兄が方向転換した瞬間に弟の時刻の方が遅くなる。
このように、兄の行きと帰りとで座標系が換わることにより、どちらから見ても弟の方が歳をとっていることになる。
参考:http://homepage1.nifty.com/tac-lab/futago.html
速度の加算
簡単な式ですので速度の加算の式を表示します。慣性座標系 S に対して別の慣性座標系 S' がある方向に相対速度 v1 で等速運動し,さらに慣性座標系 S' に対して別の慣性座標系 S'' が同じ方向に相対速度 v2 で等速運動するとき,S 座標系に対する S'' 座標系の速度 v は v = v1 + v2 でなく
相対論的質量
必要に応じて、質量について復習しよう
速度の加算の式からわかるように速度が光速に近づくと加速しにくくなります。加速とは速度の加算であることを思い出してください。また「加速のしにくさ」は「慣性の大きさ」すなわち「質量の大きさ」であることを思い出すと,速度が大きくなると質量が大きくなることを意味していることがわかります。
質量 m を速度 v の関数として表現すると,
相対論的エネルギー
m0c2 はエネルギーの次元を持つので,これもエネルギーの一つの形態と解釈して、これを「静止(質量)エネルギー」と呼び、従来のエネルギーに加えたものを「相対論的エネルギー」と呼んでみましょう。それを E で表すと
単に比例関係にあるので,質量で議論してもエネルギーで議論しても,実質的に同じことになります。従って広い意味の「エネルギー保存」は広い意味の「質量保存」と同義になります。
原子力エネルギーの説明などで「質量がエネルギーに変換された」という言い方をすると,質量もエネルギーも保存されることに反します。厳密には「(静止)質量エネルギーが運動エネルギーに(さらに熱エネルギーに)変換された」と言うべきです。こうすればエネルギー(及び質量)の増減がないことが保証されます。また静止質量が減っても運動しているので相対論的質量は減らないことが保証されます。
重力と一般相対論
特殊相対論は慣性座標系での法則ですが、完全な慣性座標系は存在しません。地球に固定した座標系は、地球自体が自転公転という加速度運動をしていることをしているので、非慣性座標系です。太陽も銀河中心の周りを公転運動していること、銀河中心も近くの銀河との間で重力を及ぼしあっていたり、宇宙膨張の運動をしていること、などを考えると理想的な慣性座標系はないかも知れません。そうすると非慣性座標系でも通用する相対論(一般相対論)に拡張する必要があることになります。
一般相対論では次の2つのことを前提とします。
光は直線の基準にされるので気づきにくいですが、重力で曲がります。その理由を授業で説明します。
重力は時空をもゆがめます。その理由を授業で説明します。
重力による時空の歪みが現れる現象
重力によって時空が歪められますが、その大きさは非常に小さいので日常生活では感じられません。重力が非常に強い天体現象か非常に精密な測定によらなければなりません。以下にその例を挙げます。
星からの光が太陽表面すれすれに通ったときに太陽重力で 1.75 秒角だけ曲げられることが一般相対論から計算されます。ここで1秒角は 3600 分の1度です。太陽の光が邪魔になって普通は観測できないが皆既日食の時には太陽にかなり近い角度にある星からの光を観測することができます。この星と太陽との間の角度が大きい時の写真と皆既日食の時の星の写真とを比べれば近隣の星との相対位置が読みとれます。
一般相対論が発表された翌年にアフリカで皆既日食があり、リビングストンが観測に出かけ、期待通りの写真撮影に成功しました。
太陽のすぐそばを通る光の場合は皆既日食を利用しなければなりませんが、電波であれば日食でなくても可能です。複数の電波望遠鏡を組み合わせて超長基線干渉電波望遠鏡として 0.1 % の精度で確認されています。
また「ヒッパルコス衛星」を用いた観測では木星による光の曲がりも観測しています。
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最近は太陽系外の天体による光の曲がりの例が「重力レンズ」としても知られていま。遠くの天体からの光が、手前にある重力が強い天体の脇を通ったときに、手前の天体の重力によって曲げられて、両脇の光がどちらも地球に届いた例です。遠くの天体、手前の天体、地球が完全に一直線に並べば遠くの天体の像は円環になります。右の写真はハブル望遠鏡で撮影され、「アインシュタインの十字架」と名付けられた重力レンズ効果の有名な写真です。写真の例では4つに別れて見えています。この4つが同じ天体からの光であることは別の方法で確認されています。
背景天体がリングに見える例
ここをクリックしてみましょう。重力源の質量分布が光源と地球を結ぶ直線を中心として回転対称であれば背景天体像が4つに分かれるのではなくリングに見えるはずです。これまでの写真で最もリングらしい写真を示します。
重力レンズの原理を説明する動画
ここをクリックしてみましょう。動画の最後で遠くの天体が弧になって見えています。
重力レンズの効果のデモンストレーション動画
ここをクリックしてみましょう。背景の天体像がどのように見えるかを説明するために加工した動画であり、実際に撮影したわけではありません。
マイクロレンズ
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重力レンズの元になる重力源は巨大質量の天体(銀河等)ばかりではありません。太陽程度の恒星も(さらに地球程度の惑星でも)レンズになれます。それをマイクロレンズと呼びます。上の図は2006年1月26日の『ネイチャー』に掲載されたものです。レンズ天体の向こうにある星からの光が、レンズ天体が手前を通過するときに、レンズによって集められて明るくなります。この図の縦軸は光強度の増幅率です。恒星のレンズによって明るさが3倍にもなりました。さらに惑星のレンズによって光が少し強くなったことも観測されました(右上に拡大図)。これによって得られた惑星質量は地球質量の5.5倍で、太陽系外で存在が確認された惑星で質量の最小記録となりました。
水星の公転軌道は太陽に近いばかりでなく離心率(楕円の程度)が大きいことが分かっています。近日点と遠日点とでは太陽重力の差が大きいので時間の進みも僅かながら違いがあり、そのために理想的な楕円軌道からずれることは理解できます。一般相対論での計算は容易ではありませんが、結論的に近日点が1周あたり 0.1 秒角移動します。しかし太陽が理想的な球でなく扁平であることによっても(一般相対論によらず古典力学の計算でも)近日点の移動が起こります。観測値と古典力学計算値との差は100年間で 43 秒角であり、原因が不明でした。この差がちょうど一般相対論で説明されました。
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しかしながら金星の大きさのために金星の反射位置による時間の広がりがこの遅れの時間より遙かに大きくなり、はっきりした観測はできません。そこで金星の代わりに探査機(バイキング探査機及びボイジャー探査機)を利用して観測されました。結果は1%の精度で予想と一致しました。
2002年、土星探査機「カッシーニ」が太陽の向こう側にいるときにこの探査機との間で通信の実験を行い、これまでよりはるかに精密な結果を得ています。図はその説明のためのもので、NASAのホームページからダウンロードしました。
太陽以外でもこのような現象が観測されています。パルサー連星 PSR1913+16 からのパルス電波でも一方の星の表面近くを他方の星からのパルス電波が通り、地球に届くときに時間の遅れが観測されています。
重力場の下の方では上よりも時間の進みが遅いことは、下から上へ向かった光の振動数が減ることを意味します。このことは光スペクトルの「赤方偏移」として観測されます。天体表面を下、地球を上として本来の振動数(同じ元素からの光を実験室で測定したもの)を f0、天体からの光を地球で測定したものを f とすると
太陽からの光でこのずれは 2.12 × 10-6 と小さく、観測精度ぎりぎりであり、はっきりした結果は得られません。しかし白色矮星の場合は太陽程度の質量でありながら大きさが100分の1くらいなのでずれは100倍ほどになります。これは充分観測可能です。
意外なことに、これらの天体と比べればはるかに重力が弱い地上で最も精度のよい測定が行われました。そのためには非常に僅かな振動数変化でも検出できる特別の方法が必要です。1960 年、パウンドとレプカは可視光よりもずっと振動数の高いガンマ線での無反跳共鳴吸収効果(メスバワー効果)を利用してハーバード大学の時計台での22メートルの高低差で 2.4 × 10-15 という非常に小さいずれを検出することができました。これが一般相対論の実験的検証の最も精度のよいものです(でした)。
「メスバワー効果」についての原子核物理学での説明はここをクリックしてみてください。
メスバワー効果よりは精度が劣りますが、原子時計でも数千メートルの高低差があれば進みのずれの存在をかろうじて検出できます。人工衛星では地上との高度差が数百〜数万キロメートルになりますので、原子時計を搭載すれば、一般相対論的効果(高さによる時間の進みのずれ)が十分検出できます。GPSは2万キロメートル以上の高度を回る複数の人工衛星に原子時計を搭載し、複数の衛星からの電波の時間差を検出して地上の位置を算出する装置です。10メートルの位置精度を出すには30ナノ秒の時間精度が必要です。GPS衛星で高さによる時間のずれの補正をしないと1日に39マイクロ秒(距離で12キロメートル)もずれてしまいます。GPSは米軍が開発したものですが、米軍は一般相対論を理解し適正に補正していたことになります。なお補正は衛星の速度による特殊相対論的効果(時間の遅れ)についても必要です。この2つの効果は逆向きに働きます。低軌道衛星では地上より遅れ(速度効果優勢)、高軌道衛星では地上より進みます(高度差効果優勢)。
第2章の「脱出速度」の項で中性子星表面での脱出速度が光速の半分程度であることを見ました。もう少し半径が小さいか質量が大きければ光速に達してしまいます。脱出速度が光速になれば光でさえも天体表面から出られなくなりブラックホールになってしまいます。
アインシュタインの重力場方程式(ニュートンの万有引力を拡張したもの)を球対称でスピン、電荷がない場合について解いた「シュバルツシルト解」によると質量 M が
ブラックホールの生成過程は2通り考えられます。その1つは大質量星が進化の最終段階で超新星爆発をしてそのあとに中性子星またはブラックホールを残す過程です。中性子星とブラックホールとの分かれ目になる星の(爆発前の)質量は太陽質量の約30倍と考えられています。このようなブラックホールの候補として最も有力視されているのは白鳥座のX1というX線天体です。質量が太陽の約10倍、半径は300km以下、ということがわかっているので星の死後の姿としてはブラックホール以外に考えられません。
これはX線望遠鏡を積んだ日本の人工衛星ASCAによる写真です。
もう1つの過程は銀河などの星が大量に集まっている場所です。星が広く大量に集まっている所で、幾何学的に考える半径とその半径内にある星の質量(一様に分布していれば半径の3乗に比例する)に対応する重力半径(質量の1乗に比例)とを比べてみましょう。この幾何学的半径を大きくとり、そこにまだ星が分布していれば、対応する重力半径が急激に(幾何学的半径の3乗に比例して)増えてこの幾何学的半径を超えることが起こり得ます。このような理由によりある程度以上の銀河の中心付近がブラックホールの条件を満たしていることになります。わが天の川銀河の中心にもブラックホールがあると考えられるようになりました。
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この写真はハブル望遠鏡で撮ったM87銀河の中心部で、その2カ所で光の波長分布も測定しています。青で示した部分は地球に近づき、赤で示した部分は地球から遠ざかっています。これは光のドップラー効果によります。その速度は容易に計算できますので銀河の中心部分での遠心力も容易に求められます。その遠心力と釣り合う重力が中心部にあるとするとM87銀河の中心部はブラックホールになっていると思われます。
ブラックホールに関する誤解授業中の調査で以下のような誤解がありました。全部間違い(一部不正確)ですので注意してください。
(復習課題5) ここをクリックしてリンクされている英語のホームページを読んで、ブラックホールに入っていったらどうなるかを調べてみよう。
(ヒント)tidal force 潮汐力(第2章参照)
event horizon 事象の地平線(戻れる限界)
(提出期限は最終授業の前日です。メールを発信するにはここをクリックします。)
調べてみよう
ブラックホールについてもっと知りたい方には専門家の説明を紹介します。英語のホームページですが挑戦してみましょう。
第3章のQ&A
A:マイケルソン・モーレーの実験の自然な解釈です。これを相対論の前提としていますので相対論から一定であることを証明することはできません。
A:いいえ、空気中に出ると空気中の光速に戻ります。なお空気中の光速は真空中の光速より僅かに遅いだけです。
A:空気中の光速ですね。変化します。したがって温度が一様でないところを光が通ると曲がります。炎天下の舗装道路の遠くに水があるように見えて近くに行くと見えなくなる「逃げ水」を経験したことがあると思います。この逃げ水の原理を説明できます。
A:銀河後退(光源が離れていくこと)による赤方偏移では電磁波(電波や光)の波長が伸びてエネルギーが減っていますが、それでも伝播速度が光速です。次の質問の回答も参考にしてください。
A:そうです。電磁波は波長の長いほうから電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線などと呼ばれています。電磁波の振動数はこの逆順です。波長と振動数を掛けると光速になります。真空中では同じ速さですが物質中では屈折率で割った速さに下がります。屈折率は波長に依存します。
A:音のドップラー効果の式を覚えていましたね。音の場合には音源速度と観測者速度とを区別していました。光の場合には光源と観測者とのどちらが動いたかは問われないことを思い出してください。対応する式は相対速度を v として
A:光速の60%だと時間は80%、光速の80%だと時間は60%というと分かりやすいですね。もっと一般的な速度で計算できるように式を出しましょう。
A:速度が大きくなると抵抗も質量も大きくなるという点では確かに似ています。抵抗は速度をゼロにするように働くのに対して質量は速度の変化をさせにくいように働くという違いに注意してください。
A:成り立ちます。質量を重量とすると無重力空間で破綻しますが、慣性の大きさは無重力空間でも存在しますので、むしろ無重力空間でこそ重量との違いがはっきりすると思います。
A:「静止質量」は0です。しかし光はどの座標系に対しても光速なので「静止」できません。光の静止質量は0ですが慣性質量は0ではありません。相対論的質量の式
A:上の質問の回答にあるように静止質量がゼロだからです。
A:そうです。電気的な力の媒体は光(光子)で万有引力の媒体は重力子です。光子も重力子も静止質量がゼロなので動く速さは光速です。
A:絶対零度でも「零点振動」が残ります。分子と理由は違いますが、光の場合は静止質量がゼロなので止まりません。
A:上の回答に示した式
A:光速を越える粒子は質量が虚数になる必要があります。存在はまだ確認されていませんが、「タキオン」(tachyon)という名前が付けられています。関心のある人はインターネットで「タキオン」、"tachyon"を検索してみましょう。
A:その通りです。しかし日常生活でその差を感じることはないと思います。
A:西播磨にある「スプリング8」の電子加速器の例で計算して見ましょう(つくばの加速器はもっと大きなエネルギーまで加速できます)。
運動エネルギーが 8 GeV まで加速されます。電子の静止質量エネルギーは 0.0005 GeV です。この合計である相対論的エネルギーは静止質量エネルギーの 16000 倍になります。従って加速された電子の相対論的質量は静止質量の 16000 倍です。なお、このときの速度は光速の 99.9999998 % です。
A:前の質問のように加速器では相対論的質量を厳密に計算して設計をしています。特殊相対論を無視した設計では使い物になりません。加速器の建設と運転が特殊相対論の検証実験であると言っても過言ではありません。また原子力利用で特殊相対論の E = m c2 という式を持ち出して核エネルギーが膨大であることの説明に使われます。このページのGPSの説明では一般相対論も考慮しなければ精度を出せません。
A:「相対論の誤りを見つけた」などの宣伝はよくあります。しかしその主張の多くは独善的な理論であり、一般には受け入れられません。前の質問の回答のように実験的に精密に確認されています。
A:非常に鋭い質問です。説明を省略しましたが厳密にはロケットの中の比べる空間の大きさを限りなく小さくした極限で議論すべきです。
A:1個の光を観測する場合には分解能程度しか角度の精度はありませんが、多数の光を観測して算出した角度は分解能よりも精度がよくなります。一般的にこのような関係は統計学の「中心極限定理」を使って証明されます(授業の範囲外)。
A:楕円軌道を公転する天体すべてで起こるはずですが、非常に小さな効果です。また近日点移動は重力が強いと目立ちます。そのために太陽に一番近い水星のデータで議論されることになります(水星軌道の離心率(楕円の程度)が大きいことも理由となります)。
A:いいえ。星のゆらぎは空気密度のゆらぎによります。空気中の光速は真空中の光速よりも少しだけ遅くなります。空気密度のゆらぎのために光速が一様でなくなり、光が屈折します。
A:相対的に遠ざかりつつあるときにやりとりする光の波長が伸びるのはドップラー効果でしたね。重力場の下から出た光が上に上がるときにも波長が伸びます。これはドップラー効果と同じ結果ですが、原因が違います。重力の赤方偏移の理由は次のようなります。
光にも重力が働きますので上に上がれば位置エネルギーが増えます。その分だけ運動エネルギーが減りますが、運動エネルギーは速度の2乗に比例するのではありません(光の速度は一定です)。運動エネルギーは光の振動数に比例(波長に反比例)します。それで波長が伸びると説明されます。
A:このページの「マイクロレンズ」の所を読んでください。地球質量の数倍でも観測された例があります。
A:「アインシュタインの十字架」のような見え方に限定しなければ地球質量の数倍でも重力レンズになれる訳ですからある程度の質量さえあれば何でもいいのでしょう。
A:太陽が同じ質量のブラックホールに化けても地球を飲込むことはありません。地球は従来どおりの軌道を周るでしょう。太陽からの光の恵みがなくなるだけです。
A:ブラックホールの大きさは時空の歪みが無限大になる「事象の地平線」の内側で定義されます。この全体に物質が高密度で詰まっているのではありません。中では中心点に物質が集まり、中心以外は空虚ですので、中心の密度は無限大で、他はゼロです。ブラックホールの大きさでブラックホール質量を割ってブラックホール密度を定義すると、密度は大きさによって多種多様です。質量は半径の3乗ではなく半径に比例することを思い出してください。星の死後のブラックホールの場合は中性子星よりも高密度ですが、銀河中心の巨大ブラックホールはかなり低密度です。
A:ブラックホールに限らず天体が周辺の物質を集めるとき、降着円盤を形成し、それに垂直方向にジェットを噴出することがあります。ブラックホールの周辺でも同様だと思います。画像にあるのはブラックホールよりも遥かに外側の画像であることに注意してください。ブラックホールは望遠鏡で見える大きさではありません。
A:夢を奪って申し訳ありませんが、超光速旅行はできません。ワープは空間を歪めて近道するものだと考えましょう。空間を歪めるには巨大な質量が必要ですが未来人は何とかするのでしょう。ところで静止質量が正のものは光速未満、ゼロのものはは光速のみでしたね。もし静止質量が虚数であれば超光速のみ(光速まで下がることもできない)になります。このような仮想粒子を「タキオン」と名づけていますが、実在は確認できていません。