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人類は隣の惑星までも行っていないのに、どうして太陽系外の恒星、さらに銀河系外の天体までの距離や大きさを知ることができるのでしょうか。この章では天体(月、太陽、恒星、銀河系外天体など)までの距離をどのようにして求められたのかを振り返り、それによって宇宙の大きさを考えます。
地球の大きさ
これはアポロ17号が月に向かう途中で撮影した地球です(NASAのホームページから転載)。地球の写真で最も美しいものとされています。現代では宇宙から地球を見ることができるので,地球が丸いことはよく理解できます。
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この図はピタゴラス(紀元前570年〜497年)が描いた宇宙のイメージです。地球が丸いとしています。また太陽系の惑星の順序(距離)についてのある程度の知識もあったことになります。ピタゴラス学派の後継者たちは地動説を唱えています。
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これは月食の写真です。月に写った地球の影が丸みを帯びているように見えます。これから昔の人も地球に大きさがある(平らではない)ことを想像できたとは思いませんか。
驚くべきことに紀元前3世紀にエラトセネスが地球の大きさを測っています。
エジプトのアレキサンドリアに住んでいたエラトセネスは古文書で、夏至の正午にシーネで井戸の底から太陽が見える、という内容の記述に注目しました。シーネはエジプトでアレキサンドリアの南にあります。太陽が井戸の底から見えるということは真上にあることを意味します。アレキサンドリアでは太陽が真上に来ることはなく、真上から7度南までしか近づきません。この7度という角度の原因を考えて地球の大きさを測る方法を思いつきました。授業で説明しますが、当時の条件でどうすれば地球の大きさを測定できるかを考えておきましょう。
月、太陽までの距離
上の月食の写真で月の大きさと地球の大きさとの割合を感じることができたでしょうか。地球の大きさが分かっていれば月の大きさも大体分かりますね。
(復習課題1)次の手順で月までの距離を測ってみよう。この課題は文献から月までの距離を調べることではなく、自分で月までの距離を測ることを求めています。解答では途中の値も表示する必要があります。
1.先ず不正確でもいいですから上の写真から月の大きさと地球の大きさの比を求め、授業で説明したエラトセネスが得た地球の大きさの値を使って月の直径を概算しましょう。
2.次に月の直径と月までの距離の比を満月のころに測って見ましょう(満月でなくても可能)。5円硬貨を用意します。穴の中から月を見て、穴の大きさいっぱいに月が見えるように目からの距離を調節します。このときの穴の直径(これをAとする)、目から硬貨までの距離(これをBとする)を測ります。このとき
A:B =(月の直径):(月までの距離)
になっていることを確認しましょう。A/Bの値に57.3度を掛けると地球からみる月の角度(視直径)が得られます。これは1度より小さい値です。1度より大きかったら間違いの原因を探しましょう。ここで観測日時、A,Bの値も解答の一部として表記しましょう。
3.最後に上の1.2.の値から月までの距離を計算します(比例計算です)。
(提出期限は最終授業の前日です。メールを発信するにはここをクリックします。)
上の写真で月のそばに星が写っていますね。星に対して月は1日で約13度も東に動きますので、そばの星が月に隠れそうです。星が月の後ろに隠れることを「星食」と呼びます。地球上の異なる位置で、この星食の始まり、終わりの時刻を正確に測ることで月までの距離が分かります。今はGPSで地球上の位置が正確にわかりますが、過去にはこの星食の観測から離れ島などの位置を求めていました。
(予習課題1-1) 月の満ち欠けの形を見て太陽、月、地球を結ぶ三角形の形を想像することができます。月までの距離が分かっていれば太陽までの距離を求めることができる(三角形の2つの角度と一辺の長さが分かれば残りの辺の長さも分かる)はずです。地球から太陽と月の方向の間の角度を測ることは容易ですが、地球にいながら三角形のもう1つの角度をどのようにして測ることができるでしょうか。3つの天体の特殊な位置関係を利用しますが、どのような位置関係を利用すべきでしょうか。授業で説明しますが事前に考えておくことを課題とします。三角形の形を言い当てるだけではなく、角度を知ることができる理由も必要です。(提出期限は授業で説明する前日です。メールを発信するにはここをクリックします。)
この課題は締め切りました。 解答例(松山大介)
月が半月に見えるときに、月・地球・太陽を三角形で結び、
このとき地球・月・太陽の間の角度は90度になるから、
直角三角形の位置関係を利用して地球から太陽までの距離を測ることができる。
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地球の大きさが分かってはじめて月までの距離が分かり、月までの距離が分かって太陽までの距離が分かります。太陽までの距離は近くの星までの距離を求めるときの基準になります。
太陽系の大きさ
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カイパーベルト
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(右上)太陽系の外側の惑星を示します。カイパーベルトが薄く表示されています。セドナはカイパーベルトから外れた外側にあります。
(右下)さらに広い範囲でセドナの軌道を示します。軌道が非常に長い楕円であることが分かります。
(左下)さらに外側を見ると「オールトの雲」があると考えられています。当初セドナの遠日点はこのオールトの雲まで達している(セドナはオールトの雲から太陽系に落下してきた天体)と期待されました。この図ではオールトの雲の内側を表示していて外側は示していません。外側は隣の恒星系との中間点まで達すると考えられます。そこまでを太陽系とすることもできます。
第10惑星か
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とうとう冥王星よりも大きい天体が見つかりました。この図は『ネイチャー』2006年2月2日号からコピーしたもので関連する天体の大きさを比較しています。左端のセレスは小惑星で最大のものです。3番目のトリトンは海王星の衛星で、カイパーベルト天体であった可能性があります。4番目の「2003UB313」という名の小天体はカイパーベルトの外にあり、直径が3100kmと冥王星よりも大きいことが分かりました。タイタンは木星の衛星で大気があります。ガニメデは土星の衛星で太陽系最大の衛星です。問題の2003UB313は冥王星(直径2300km)よりも大きいので太陽系の惑星に加えれば第10惑星になります。また冥王星を惑星から外せば太陽系の惑星は海王星までの8惑星になります。
「惑星」の定義が問題となり、2006年国際天文学連合で、惑星から冥王星を除外する決定が行われました。なお、2003UB313には「エリス」という名前がつけられました。エリスにはディスノミアという衛星も見つけられています。
![]() 水星 |
![]() 金星 |
![]() 火星 |
![]() 小惑星 |
![]() 木星 |
![]() 土星 |
![]() 天王星 |
![]() 海王星 |
![]() 冥王星 |
![]() エリス |
近い恒星までの距離
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(予習課題1-2) 年周視差を利用した三角測量はどのくらい遠いところまで通用するのでしょうか。文献等で調べてください。観測機器の進歩によって最遠記録が更新されつつあることにも注意し、引用文献も明示してください。(提出期限は授業で説明する前日です。メールを発信するにはここをクリックします。)
この課題は締め切りました。 解答例(奥口華帆)
2002年に日本で建設されたVERA(VLBI Exploration of Radio Astrometry)が、17250光年の距離を年周視差で計測することに成功した。
VERAは天体の位置を10マイクロ秒角(3億6千万分の1度)の精度を目標に計測し、年周視差を測ることで、天体の距離を求める。2つの天体が同時に観測できる2ビーム望遠鏡であり、隣接する2つの天体を同時に観測することで大気の揺らぎを打ち消し、位置の精密測定を可能にする。
参考:VERA
http://veraserver.mtk.nao.ac.jp/index-J.html
この図は太陽系に近い恒星の分布を示します。ケンタウルス座α、シリウス、アルタイルなどのよく知られた星が書き込まれています。
1 pc 離れて見ると地球公転半径は1秒角の角度で見えるわけですが,望遠鏡で星の大きさまで見えるのでしょうか。考えてみてください。
超巨星のペテルギウス(太陽の約1000倍の大きさで500光年離れている)をハブル望遠鏡で見る場合はどうでしょうか。答えはここをクリックしてみてください。
銀河系の発見
地球で観測される星の明るさ(「見かけの光度」と呼びます)は星が本来持っている明るさ(距離を一定にして定義する明るさで「絶対光度」と呼びます)に依存すらばかりでなく星までの距離にも依存します。途中で光を吸収する物が無ければ見かけの光度は絶対光度に比例し、距離の2乗に反比例します。「見かけの光度」、「絶対光度」、「距離」の3つのうちの2つが分かれば残りの1つは計算できることを念頭において読み進んでください。
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遠い恒星、近い銀河までの距離
地球から見た星の明るさ(見かけの光度)は星の本来の明るさ(絶対光度)と星までの距離に依存します。見かけの光度の他に絶対光度を何らかの方法で知ることができれば次のように距離を算出できることになります。絶対光度や絶対等級は10パーセク(32.6光年)の距離で見るときの光度や等級ですので次の関係が成立ちます。
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HR図法は上のようなHR図が温度(色の観測から簡単に求められます。)と絶対光度との間の関係を与えていることを利用するものです。HR図で左上から右下にかけて大集団が分布していますが、これを「主系列星」と呼びます。HR図法は星団までの距離を求めるのに有効です。なぜならば1つの星団に属する星までの距離が共通として扱えるからです。1つの星団に属している星のHR図を温度と見かけの光度との関係で表しておいて、その図を上下にずらして絶対光度で表したHR図と一致するように重ねると、そのずらした量から[(絶対光度)/(見かけの光度)]を算出することができます。絶対光度で表したHR図を作るためには三角測量で距離が分かった星の情報が必要であることに注目してください。
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セファイド法を用いて我々の銀河系(天の川銀河)の中にある天体と外にある天体の区別、銀河系の大きさなどが分かってきました。「アンドロメダ星雲」は銀河系の外にある別の銀河であることが分かりました。「星雲」とは他の星の光で照らされた銀河内の星間ガスのことを指しますのでアンドロメダは「アンドロメダ銀河」と呼ぶのが正しいことになります。
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(予習課題1-3) ところでこのセファイド法はどのくらい遠くの銀河まで距離を求めることができるのでしょうか。それは何によって制限されるのでしょうか。文献等で調べてください。観測機器の進歩によって最遠記録が更新されつつあることにも注意し、引用文献を明示してください。これまでのレポートでは、ハブル望遠鏡も「地上にある望遠鏡の分解能の制限からくる」と誤解した解答が多く見受けられました。 (提出期限は授業で説明する前日です。メールを発信するにはここをクリックします。)
この課題は締め切りました。解答例(久連山太一)
セファイド法を用いて距離を測定した最遠はNGC4603銀河の約1億800万光年であり、ハッブル宇宙望遠鏡により計測された。
このくらい遠方にあると、銀河中の星からの光は検出限界ぎりぎりとなり、変光星でないものも明るく見えたり暗く見えたりしてしまう。
参考URL
http://www.astroarts.co.jp/news/1999/06/990602univ-age/index-j.shtml
天体の大きさ
太陽系内の惑星や衛星は地球から見る視角と地球からの距離との情報でその大きさを求めることができます。太陽系外の天体でも星雲や銀河等のように視角が読みとれるものは距離の情報もあれば大きさが求められます。ところが近くにある超巨星以外に星の視角を望遠鏡で読みとることはできません。超巨星のペテルギウス(太陽の約1000倍の大きさで500光年離れている)をハブル望遠鏡で見てもこの程度です。しかし星の絶対光度と温度の情報があれば大きさを求めることができます。絶対光度は「面積当たりのエネルギー放出率」に「面積」を掛けたものです。面積当たりのエネルギー放出率は「シュテファン・ボルツマンの法則」という物理法則を使って温度から求められます。また温度は色から簡単に得られます(これも別の物理法則を使います)。この法則の内容はこの授業の範囲を大幅にこえるので説明は控えますが、絶対光度と色の情報から面積がわかり、半径もわかることになります。
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遠い銀河までの距離
セファイド法よりももっと遠い天体までの絶対光度を求める方法としていくつか考えられます。そのうち
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ハブルがハブルの法則を見つけたときのデータは600万光年(約2 Mpc)までのデータでしたが、この図はいくつかの方法による距離を比べた最新のデータを示しています。横軸は約15億光年まで広がっています( 1 Mpc = 326万光年 )。このデータの200分の1だけのデータで法則に気づいたことは注目に値します。
一旦ハブル定数を決めてしまうと、この関係が遠くの銀河まで成り立つとして、観測される後退速度から距離を求めることができます。後退速度はドップラー効果から距離によらず簡単に求められます。ハブル定数を決めるために距離の基準の較正があったことに注意してください。

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方向は限られていますがもっと遠くまでの銀河分布のデータが公開されています。これは約45億光年までの分布です。
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この図は今まで見つかっている最も遠い銀河の画像です。「赤方偏移」は約6.9(波長が6.9倍伸びている)でこれまで見つかったもので最大です。このくらい遠いところでは距離で表現するより赤方偏移で議論する方が便利です。理由はハブル定数は今後もより精密に測定されるべき量であり、それを使って求めた距離はハブル定数の改訂で変化するのに対して赤方偏移はハブル定数を使わずに得られている量だからです。宇宙年齢を136.6億年とすると宇宙の地平線から7.8億光年の位置にあります。
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宇宙の大きさ
最後に宇宙の大きさについて復習しておきましょう。フィリップおよびフィリス・モリソン、チャールズおよびレイ・イームズ事務所共編著「パワーズ オブ テン」(日経サイエンス社)にある図を示します。精密な画像をホームページに載せると著作権を侵害しますので縮小表示しています(原図は1ページの大きさ)。詳しくは授業の場で示します。各図は正方形の想像図または写真で,その一辺の長さを図の下に表示しています。図の中心の小さな正方形の部分が次の図では10倍されて画面いっぱいに表示されます。本の表題の"Powers of ten" は「10の冪(べき)」という意味で,冪を1つずつ(10倍ずつ)大きさを変えて,大は宇宙全体に近い大きさ(宇宙の地平線までの10分の1程度の大きさ)から小はクオークの世界までを概観しようというものです。 最初の図が観測された銀河分布と似ていません。この本が出版された頃には銀河分布の精密な観測がなかったので止むを得ないと考えられます。
![]() 約10億光年 |
![]() 約1億光年 |
![]() 約1000万光年 |
![]() 約100万光年 |
![]() 約10万光年 |
![]() 約1万光年 |
![]() 約1000光年 |
![]() 約100光年 |
![]() 約10光年 |
![]() 約1光年 |
![]() 1兆 km |
![]() 1000億 km |
![]() 100億 km |
![]() 10億 km |
![]() 1億 km |
![]() 1000万 km |
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![]() 10 km |
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![]() 100 m |
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(復習課題2) 1光年の図の中心に見える明るさに問題がありそうです。太陽の絶対等級は4.8等です。絶対等級は10パーセク(32.6光年)での明るさで定義されます。1等級毎に2.5倍の明るさの変化です(5等級差で光度が100倍の変化)。太陽を1光年の距離から見たら見かけの明るさは何等星であるかを計算して見ましょう。小数点以下までの計算には対数の知識が必要です。関数電卓、対数表、対数の知識がない場合は何等星と何等星の間であるかという解答でもいいことにします。(提出期限は最終授業の前日です。メールを発信するにはここをクリックします。)
(ヒント)次の3段階で考えましょう
1.32.6光年から1光年に近づくと何倍の明るさになるか
2.その比は何等級差になるか(2.5倍を何回繰り返すか)
3.その差を4.8から引く
第1章のQ&A